第94回「永劫不滅」田中翔(4年生)
いつもお世話になっております。
“元”主将の田中翔です。
今日は、口うるさくて、ガミガミうるさかった元主将から、部員に向けて最後のメッセージを添えます。家に帰ってからでも、時間のある時に読んでください。
ついに、この時がきました。大学4年間はあっという間と常々言われていましたが、あっとしてる暇もなく引退を迎えました。大学生活は、毎日が忙しなく、振り返ることをせず、ひたすら前を向いて突っ走りました。
正直、引退してから寂しい感覚はなく、1年間、ずっと背負い続けてきた重りが外れて、やっと解放された気分です。引退後のサウナの整いは人生最高潮を更新しました。
書きたいことはたくさんあるのですが、以下にまとめさせて頂きます。
1.勝負
2.メンタル
3.GIVE&GIVE
4.同期へ
5.最後に
【1.勝負】
ここまで競技生活を応援してくれた皆様には、とてもとても申し訳ないのですが、正直、この競技に対して特別楽しいという感情を抱いたことは、殆どありません。いや、全国大会を目指して、高校まで12年間続けてきたサッカーも嫌いでした。
僕は、人と戦うことが嫌いです。
なぜなら、勝負事には勝ち負けがあるからです。僕は、負けることが嫌いです。負けると、今までの行動が全て否定された気分になります。負けると、自分の不甲斐無さを真っ向から見せつけられます。負けると、気持ちが悪くなります。
部員のブログで数々登場する、”楽しんで頑張る”という言葉、綺麗事すぎて、全然気に食いません。競技自体はどれも楽しいものなんかじゃありません。その先にある、勝利があるから楽しいんです。僕はそう思ってます。
勝負は勝ってなんぼです。
『結果より過程が大事』なんてものは、勝った人が言うセリフです。少なくとも、今のチームに、結果が出なくても楽しければいいと思っている人がいるなら、今すぐ辞めてください。少なくとも、明治大学体育会ボードセーリング部は、そういう組織でなければなりません。
その中で、僕が勝負に勝つために、一番大事にしていたことは、
“自分を常にレベルの高いステージに置く”
ことです。
自分より速い人が出る日は自主練に積極的に出たり、同期なんかをライバル視せずに上級生に勝つ意識を持ったり、NIKEランで月100キロ走ってる人のグループに入ってみたり、なんでもいいです。まずは、自分を昂らせてくれる人や環境と一緒にいることが大切です。
この部活に入部したのも、実績、雰囲気共に、日本一を取れるチームだと思えたからです。人は、自分を取り囲む人や環境によって、良くも悪くもなりうる生き物です。
厳しい環境に飛び込むためには、勇気と覚悟が必要です。その環境で成長するには、体力と知恵が必要です。その過程を経て、自信が生まれます。
後輩のみんな、この部活は、ウィンドサーフィンに関していえば、間違いなく日本一の環境です。みんなには、この部活に入部した勇気と覚悟があります。あとは、一番速い先輩にうざがられるくらい質問したり、呆れられるくらい平日海に出たり、学んだことを言語化できるくらい頭とノートにまとめることができれば、必ず結果はついてきます。
今、この環境に何も考えず居座っている人、身を潜めている人、努力を怠っている人。もったいないです。
日本一の環境にいるのだから、その今いる環境で一番の向上心を持たなきゃいけません。貪欲に、勝利を求めてください。環境に甘えていては、自分のためにならないだけでなく、その組織の足を引っ張り、腐らせる要因になっています。自覚がある人、いませんか?
そして日本一の環境でトップになれば、それは絶対に、圧倒的な自信が付きます。毎週のラウンディングで、日本一になれるチャンスがみんなにはあります。
繰り返しになりますが、勝負は勝ってなんぼです。負け癖がついてる人、めちゃくちゃダサいです。勝って勝って勝って、かっちょいい漢になってください。
※明治カップのリベンジは、必ず果たします。
【2.メンタル】
僕はメンタルモンスターです。
ブラボーこと長友佑都選手の著書『メンタルモンスターになる』も、勿論読みましたが、自分の方がメンタルモンスターだなと感じました。
ウィンドサーフィンに関しては、大会の環境が違ったり、複数日に渡って開催されるがゆえに、自分のリザルトや体力によって、モチベーションやメンタルが大きく揺らいでしまうことが多いと思います。
そんな時に大事な秘訣を伝授します。特別です。
僕が実践していたのは、今この場にいる自分を
“主人公”
に見立てることです。
具体的には、例えばレース初日にうまくいかなかった時は、
「初日がダメでも、最後に巻き上げていく方がかっこいい」
「もしこの大会がダメでも、次の大会で優勝するためのステップになる」
と、目の前に事象として起こった現実を断片的に考えるのではなく、これから先に繋がる自分が主役のストーリーのほんの一部分だと思い込みます。
どんな漫画だって、主人公に何か辛いことあるからこそ、その後の成功に感動が舞い降りるわけです。
僕は、団体戦初日の夜、こんなことを考えていました。
「初日、主将で主人公の僕が、チームの足を引っ張っている。でも、残り2日で7レース、ここでチームを一番手で引っ張ったら、めっちゃかっこよくないか??尻上がりでチームを引っ張れたら、めっちゃかっこよくないか??」
「しかも団体戦だって、これから先の俺のストーリーのたった一部分でしかない。もし負けてもいいじゃないか。漫画の最終回で主人公が負けるパターンはめっちゃ感動するよな??」
ちょっと、厨二病チックですが、本当にそう思ってました。つばさみたいですね。まあ、そんなことを考えてたら、気づいたら優勝していました。やっぱり、自分は、主人公だったと思いました。思い込むことで、結果が出ます。言霊みたいなもんです。
また、この団体戦のおかげで、この4年間が、最高に自分らしい、苦しくもがき続けて最後に花が咲く、お見本のような感動ストーリーになりました。
ほんの一例でしかないですが、みんなの大学生活、ウィンド生活、どれもこれも、みんなにしか描けない作品です。主人公を誰にするかは、自分で決められます。なら、自分をとびっきり輝く主人公にしてみたらどうですか?
メンタルがどうのこうのばかり言ってる皆さん、一度、試してみてください。メンタルは強い弱いではなく、自分でコントロールするものです。
【3.GIVE&GIVE】
この言葉は、自分がチーム作りをする上で、もっと言えば、人間関係を形成するうえで大切にしていた言葉です。
ここでまず、大学で受けた講義の中で印象に残っているのが、『贈与と負債』という概念の話をします。
[人間関係は贈与と負債の関係である。というのも、例えば、恋愛関係において、男性がご飯を奢ったら、男性が女性に贈与し、女性はその男性に対して精神的負債(奢ってもらったという罪悪感のようなもの)を抱えた関係性になる。その後の2人の関係性は、負債がより大きい者が、相手に対して負い目を感じ、何かしてあげなければいけない感情になり、何か違うもので贈与(プレゼントなど)する。これが、贈与と負債の簡易的な構図である。]
話は戻りますが、僕は友達や彼女、同期や先輩や後輩と良い関係を保つために、GIVE&TAKEではなく、
“GIVE&GIVE”
の気持ちで、人に接することを心がけています。これは、良いチーム作りをする上で、1番に考えていました。
何か後輩にしてあげたら、同期にしてあげたら、部のためにしてあげたら、見返りを求めるのではなく、また何かをしてあげる。GIVEをしたら、またまたGIVEをする。とにかく人に贈与する。そうしたら、いつか、どんな形であれ、自分に返ってきます。物ではなくても、尊敬であったり、感謝であったり。皆さんも、何か心当たりがあるはずです。人間関係はそういうものです。
主将という立場になって、やらなければいけない仕事は数えきれないくらいありました。後輩にご飯を奢ったこともありました。みんなの代わりに大人に怒られたこともありました。
でも、感謝してくれなんて思ったこともないし、認めてくれなんて思ったこともありません。裏で頑張っていたことを、知ってくれるだけで充分です。
これを読んでくれたみなさんは、人にもらったご恩を、その当人だけではなく、他の人にでもいいので返してください。そして、たくさんたくさんGIVEしてください。そうすれば、必ず何か違う形で、自分に返ってきます。贈与と負債は連鎖します。みんなで、GIVE&GIVEの気持ちで、人に何かしてあげられる人間になってください。
【4.同期へ】
まず、特にこの1年間、結果が出ず苦しい期間が長い中で、腐らず、常に団体優勝に向かってくれてありがとう。そして、それぞれの形で一緒にチームを支えてくれてありがとう。この部活がなければ、一生関わることのなかった性格もキャラクターも正反対の自分達が、こんなにも分かり合えるメンバーになれるとは思ってもみなかった。改めて、ありがとう。
まさしへ
人一倍頑張ってるのに、不器用で、結果も出ず苦しい4年間だったと思うけど、インカレくらいから髪のウェーブ具合と共に結果も出てきて、最後の団体戦ではめちゃくちゃ頼もしかった。耳が遠くてイライラすることもあったし、食べ方はねっとりしてて気持ち悪いし、飲み会では注ぐ酒の量が下手くそでムカつくことも多かったけど、いつも頼りにしてたのは将だった。部の運営から、チームの雰囲気だったりを率先してマネジメントしてくれて、とても助かった。ありがとう。
幹太へ
まさかのクラスメイト。なのに、大学では一切話すことはなく、一年秋の習得単位は俺はフル単、幹太は一桁と、どう考えても初めの頃から協力すればよかったと反省してる。今頃、留年通知でもきてるかな。幹太は、忙しいこととかきついこととか全然表面に出さないから、人間味がないというか、感情の読めない人間だけど、俯瞰的に物事を見れる感性とか、黙々と仕事をこなす部分は、めちゃくちゃ尊敬してた。なんとなく、卒業してから、会うことがめちゃくちゃ減るような気がするけど、実は飲み会で熱い話するのが大好きなのは知ってるから、またみんなが集まる時に、現役の頃を振り返りながら、またあっつあつの話でもしよう。最後の団体初日のレース、痺れました。
つばさへ
新歓コンパの最初に「仲良くなれない気がするわ!」と言い放ってごめん。マジでそう思ってたせいで、多分口を滑らせたんだと思う。そりゃ、共通の趣味である坂道グループのコンサートには一緒に行ってくれないし、今でもきっと俺のことを同期ランキングビリにするわ。ごめんよ。あと最後の団体、出させてあげられなくてごめんよ。さて、謝るのはこの辺までにして、つばさはふざけてばっかでくそイライラすることもあったし、マイペースで空気読めないことも多々あったけど、それでもみんなに愛されるのは、天性の才能だと思う。俺にはできないし、多分、つばさにしかできない。そんなつばさがいたから、後輩と垣根無いチームが作れたと思うし、つばさのことが大好きな後輩は多いと思うよ。少なからず、俺よりは。これから先も、みんなに愛される人でいてください。社会人なってからも、サイレント爆飲みを期待しています。
くんぺいへ
将以上に不器用で鈍臭くて、マイペースで、主張が強い。最高に俺とぶつかり合えるポテンシャルがあったから、時々俺は爆発しかけてたけど、それでもチームの雰囲気を1番に考えて、ズバズバと後輩に説教もするし、なんなら先輩にも説教してたし、めちゃくちゃ助かってた。ハンドルを握ると性格変わるのは、マジで気をつけて。いじられキャラで、なのに別に面白くもなくて、日本屈指の下戸で、だけど、俺らの代を一番中心で繋いでくれてたのがくんぺいだった気がする。クセしかないメンバーを取り持ってくれてありがとう。そして、失礼ながら、この部ではありえないくらい結果が出なくて苦しんでたのにも関わらず、最後まで部にいてくれてありがとう。今年の日本一になった裏のMVPは、間違いなく、くんぺいです。
【5.最後に】
最後になりますが、いつも部の活動を支援して下さっている川野部長、角張監督、コーチ、OB・OGの皆さん、並びに、土屋さんをはじめとするKAYAの方々、本当にありがとうございます。
僕自身、この1年間、感謝の言葉では返せないくらい、サポートして頂きました。キャパが小さく、すぐいっぱいいっぱいになってしまう自分が、ここまで成長できたのは、皆さんのお力添えがあったからこそです。この4年間で得た経験を、次は社会人というステージで、目一杯活かせるよう、頑張っていきたいと思います。
そして、次は皆さんと共に、後輩達の団体戦の”継勝”を応援するべく、恩返しのつもりでサポートに尽力していくつもりです。
この部活に入り、本当に楽しく、充実し、苦しみ、成長できました。本当に本当に本当に、ありがとうございました。
2022年度主将 田中翔