第135回「Fair is foul,and foul is fair;(Macbeth l.i.10)」長田光平 (4年生)
これはイギリスの劇作家シェイクスピアの四大悲劇のうちの一つ、『Macbeth』の冒頭における三人の魔女の台詞だ。
この台詞には色々な訳が付けられているが、「いいは悪いで、悪いはいい」(小田島雄志訳)、「きれいは穢い、穢いはきれい」(福田恆存訳)といった類の意味だ。物事の二面性、価値の逆転を鮮やかに捉えた名台詞である。
ありとあらゆる価値観が、ふとした瞬間にひっくり返る世の中。確実で絶対的なことなんて何一つない。人間万事塞翁が馬、だ。そんな当たり前のことを、ウィンドサーフィンからは学んだ。
思い返してみれば、大学受験や大学一年生の時のコロナ禍がなければ、この部活には出会うことはなかった。もちろん千葉や埼玉に住んでいたら、試乗会に参加する選択肢すらなかっただろう。受験にも留学にも多少の未練はあるが、結果オーライだ。人生何が起きるか本当に分からない。何れにせよ、軽い気持ちで(にしては、安くない初期費用だったが)入部を決めた当時は、大学生活が日光に晒され続け、海水まみれの甘じょっぱい三年間になるとは想像だにしていなかった。
入部してからというもの、酸いも甘いも噛み分けた、では言い表せないほどの、最高の瞬間と生命の危機を感じる恐怖の瞬間という、両極端の経験をした。自然に対する畏怖の念を抱き、自然の恩恵を肌で味わうことができた。これは自然と真っ向から対峙する競技でしか味わうことのない、紛れもない財産だ。結果的には、本当に良い経験となった。
競技面では、思い通りにいかない辛抱の時期が長かった。それでも、耐えた苦しみの分だけ、目標を達成したときの喜びは大きくなる。そして、心が折れそうな時は、同期が常にそばにいた。彼らに負けたくない、この一心でこの競技を続けることができたと思う。感謝の一言だ。ちなみに、大会に限らず、艇速練やラウンディングの一本たりとも負けるつもりはさらさらなかった。誰か気づいてた?笑
一人一人へのメッセージは、また機会があれば。とりあえず、来年うまくやってくれ。
運営面では、会計幹部として組織の自治の一端を担った。前任の堀越さんが作り上げた会計システムを享受し、角張監督やOB・OG会の監査の方々とも協力しながら、組織運営の面白さを知った。競技で成績が出ない時でも、自分がいなければ部の運営が成り立たない、そんな責任とやりがいを感じることは、部に貢献している実感を持てる瞬間だった。後任の吹田、川口は大変な役割だろうけど、頑張れ!キーワードは、「困難は分割せよ」(https://ameblo.jp/ynuwsf48/entry-12824595229.html)だ。
そして、二年入部はとても難しかった。同期の宏太の存在に大きく助けられた。一緒に二年生の支部選を通過して、深夜の鎌倉駅前で交わした抱擁は忘れません。二年入部は時間が限られてるし、同い年だけど一個上の先輩との距離感を掴むのに二年間費やしてしまう(大島さんをしゅんや、内藤さんをしんのすけ、と呼ぶのをずっと躊躇っていました)が、学年を跨いで色んな人と仲良くなれるし、より中身の濃い大学生活が送れる。もし迷っている新入生を見かけたら、是非背中を押してあげてほしい。
何がともあれ、この競技に出会い、非常に刺激的な環境において、自分の価値観がどんどん更新されていくのが、とても新鮮で、胸が躍る三年間だった。艱難辛苦を耐え切った先には、絶景の晴れ舞台が待ち受けている。物事の良い、悪いを決めるのは、全て自分の行動次第。不確定要素だらけで、予期せぬことまみれのウィンドサーフィン生活によって、とにかくまず行動すること、飛び込むことの大切さを学び、変化しつづける状況に対して、頭を使い続ける習慣がつき、アドリブでの対応力と何事にも屈しないド根性が鍛えられた。
もし、辛くて辞めたいと思うことがあれば、考え方を柔軟に、視点を変えることが大切だ。どうすれば辞めないか、逆算して考える。マーク回航から逆算するウィンドと同じ。ヘダーが来たら、タッグすればリフトだ(実は、これがウィンドの中で一番好きな性質だった)。人と同じコース取り、やり方をしても追いつかない。主人公補正が誰にでもかかっているわけではないのだから(ちゃんと憧れてます)。どこかで決断し、差別化を図る。最終的にいい結果を導けるように。
最後に、ウィンドサーフィンを通して知り合った全ての人に感謝したい。人生を大きく変えてもらった。特に、覚えてないかとは思いますが、新歓にて熱心に勧誘をしてくれたOBの平林さんには、この場を借りて感謝します。本当にありがとうございました!!
あと、何事にも二面性がある!と啖呵を切ったが、怪我と病気には細心の注意を払ってほしい。人間、誰しも過ちは犯す。最後の沖縄遠征にて、インカレ後の高まる興奮を抑えきれず、ベッドにダイブして脱臼をし、即引退を余儀なくさせられるようなことがないように。亜脱臼癖のある人は、早めに手術を視野に入れること。
それでも、日曜深夜に救急外来に同伴してくれる素晴らしい仲間を持ち、謎の励まし動画とコメントを色々な人から貰い、その緊急整復手術をしてくれたのは、琉球大ウィンドサーフィン部OBのお医者さんだった。どこにいても、ウィンドサーフィンで繋がっているのだと思い知らされた。いいんだか、悪いんだか。
また会う日まで。